10.23
『サムライトルーパー』の武装シーンに、『ダイオージャ』が混ざってしまった件─そう思った人、他にもいるはず・その2
それは、巨大ロボットものにおける合体シーンと同様に、丁寧な作画がなされ、いわゆるバンク(使い回し)によって、毎回のように見ることができた。
主人公たちが、ポーズをとって、「武装ぉー!烈火ぁー!(注1)」と叫ぶところから始まる武装シーンは、透過光が多用され、反物が飛び交い、桜の花びらが舞い散るなど、ケレン味にあふれ、美しく派手である。
降り注ぐ桜の花びらが、鎧に変化したかのようなイメージの後、決めポーズを様々な角度から見せて、武装シーンは終了となる。
本作は『聖闘士星矢』(1986-89)のヒットを受け、言ってみれば、二番煎じとして作られたものである。
だが、この武装シーンの多用は、『星矢』にはなく、本作から導入されたものと言ってよいだろう。
『星矢』にも、聖衣(クロス)を装着するシーンがないわけではない。
だがその映像表現は、非常にあっさりとしたものである。さらに、主人公たちは、ほとんど聖衣を装着し続けているため、装着シーンの回数が、極めて少ないのである。
本作以降、『天空戦記シュラト』(1989-90)、などの、いわゆるプロテクトヒーローものには、この派手な武装シーンは、不可欠なものとなった。
そしてもちろん「美少女戦士セーラームーン」シリーズ(1992-97)のような、他ジャンルの作品(注2)においても、同種の変身シーンは、見どころのひとつになっている(注3)。
本作の武装シーンは、そのように重要なものである。だが私は、このシーンに関し、大きな記憶違いをしてしまっていた。
「武装ぉー!烈火ぁー!」の後に、鼓の効果音が入ると思っていたのだが、放送を録画したビデオを見直してみると、そんな効果音は、存在していない。
では、自分の記憶にあるのは、一体、何であるのか。
長らく考えて、やっとわかった。
鼓の効果音は、巨大ロボットものの『最強ロボ ダイオージャ』(1981-82)の合体シーンで、使われていたものであった。
どういうわけか、記憶のなかで、両者が混同されてしまっていたのだ。
両作品は、製作会社と放送枠が同じである。また、『トルーパー』は戦国武将や「八犬伝」、『ダイオージャ』は「水戸黄門」と、どちらも元ネタが和風である。そして、キャラクターの絵柄も、それなりに似ている。
その程度の共通点でも、記憶のなかで、混ざってしまうことはあるのだ。
毎年々々、何十というアニメ作品を視聴し続けていくうちには、記憶が混ざってしまうのも、無理からぬことかもしれない。
自覚していないだけで、他にも混同しているケースは、あるだろうと思う。
時々、あるアニメ作品を、他の作品と混同して論じた文章を見かける。けれど、そうしたものを書く人を、安易に笑えないと感じる。
アニメ作品に関する文章を書くときは、記憶だけで書くことなく、きちんと映像を見直す必要があることを、痛感している。
(注1)主人公の場合。他メンバーの場合は、「光輪」「金剛」「水滸」「天空」となる。大部分は、主人公の武装シーンだったが、他メンバーのみのシーンも、数回あった。
(注2)「セーラームーン」シリーズを代表とする、いわゆる変身ヒロインもの。ないしは、「セーラームーン」シリーズも、その一種であると見なされる、魔法少女もの。「セーラームーン」シリーズは、「戦闘美少女系魔法少女もの」の先駆けと見なされている。
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