03.20
グレーゾーン短歌2首:母の呆け加速していく妄想に……
母の呆け加速していく妄想につきあい切れぬ口ふさぎたい
おのが子の息の根止めるバカな親気持ちがわかる時が来るとは
*自分の赤ん坊を何とか泣き止ませようとして、布団などを押しつけてしまって、窒息死させてしまう親がいる。
なんとも、バカな親がいるものだと思っていた。けれどまさか、そういう人の気持ちがわかると思える日が、この私にやって来るとは。
めでたく91歳の誕生日を過ぎた母の認知症は、ますます進み、妄想がひどくなってきた。
その妄想話につきあい切れない私が、どんなに話を止めてくれと頼んでも、母の話は止まらない。
いつもなら、私の方が席を外すことで、母の妄想話から逃れるのだが。今日は、すぐにはその場を離れられない事情があった。
だから、どんなに止めてくれと頼んでも続く、母の妄想話を止めたいが一心で、つい、母の身体につかみかかりそうになってしまった。実際には、身体に触れる前に寸止めしたが。
そして、ふと思った。泣き止まない赤ん坊を、何とかして泣き止ませようとして、窒息死させてしまう親の気持ちとは、こんな感じなのではないかと。
別に、相手の生命をどうこうしようなどという気持ちは、毛頭ない。だが、ただとにかく。「この、うるさくてたまらない泣き声を何とかしなくては。どうにかして泣いているのを止めなくては」。そう思うあまりに。とにかく泣き声を何とかするためだけに。顔に布団を押しつけてしまう。
「その結果、どのような事態がもたらされるか」などということを考えられるだけの、心のゆとりもなく。とにかくただ、泣き声を止めたい一心で、赤ん坊の顔に布団を押しつけてしまうのではないかと。
相手が子どもの場合は。自分が、子どもを死なせてしまうような、未熟な人格の人間であると自覚していれば。あえて子どもは持たない、という選択もできるだろう。
だが親の介護は、それをしないという道を、選ぶことができない。「自分は、親の介護をキチンと行えない、下手をすれば○ろしてしまう」からといって、逃れることはできない。
この程度の妄想では、母を入院させてもらうことはできない。かといって私も、入院させてもらえるどころか、そもそも病気ですらない。母も私も、この先ずっと、この家で一緒に暮らしていくしかない。因果なものである。
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