10.17
「柱」といっても『鬼滅の刃』ではなく、印刷用語です
校正・校閲の仕事では、毎日のように「柱」という語を使用している。
まつやま書房「本の各部名称」
http://matsuyama-syobou.com/jihi/j3b.htm
に図示されているように、印刷・出版用語で柱とは、版面外にある見出しのことをいう。
「柱が正しく入っているか(第2章なのに、第1章の見出しが入っていたりしないか、等々)」は、校正・校閲の際、確認すべきポイントのひとつである。
世間一般で柱といえば、だいたい、以下のようなことを指すだろう。
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1 地面・礎石・土台の上に垂直に立て、屋根・梁 (はり) ・床など上部の荷重を支える材。
2 縦に長く1の形状をしたもの。「火の柱が立つ」「水柱」
3 グループの中心となる人。頼りとなる者。「一家の柱」「チームの柱」
4 物事全体の中心となるもの。「賃上げを柱に要求を決定する」
5 書物の欄外にある見出し。
goo国語辞書「柱」の項より
https://dictionary.goo.ne.jp/word/柱_%28はしら%29/
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このように、一般向けの辞書でも、印刷用語としての柱の意味は掲載されている。
だがやはり。
マンガ&アニメの『鬼滅の刃』が、これだけ話題となり、地元紙でも昨日・今日と、昨日公開された劇場版の人気ぶりが取り上げられ、「社会現象」と呼んでも構わないほどのムーブメントとなっている今となっては。
「柱」というと、別の意味─『鬼滅の刃』において、この語はある特別の地位・役職(の人々)を指すものとなっている。上記の辞書的な意味の「3」から発展したものであろう─を思い浮かべずにはいられない。
『鬼滅』の用語としてであると、上の辞書引用にある文例の「水柱」も、全く別の意味、ある特定の人物を指す言葉になってしまう。
そんなこんなで、ここしばらくは。
仕事で「柱」という語を使う度に、何となくニヤニヤとしてしまっていたのである。
ついでにいうと、『鬼滅』では、敵のランクとして「上弦・下弦」というものが出てくるのだが。
最近の仕事で、統計学関係の書籍の校正をしていて、「上限・下限」という語を目にした際、『鬼滅』の「上弦・下弦」を思い出して、笑ってしまった。
私自身は、この作品にそれほどはまっているわけではない。
だが、こんなことを考えて楽しんでしまう程度には、無視できない存在になっている、ということである。
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