02.26
麦粒腫の俗称は不適切?─この言葉狩りの時代に・その1
なんのことはない。俗に言う「ものもらい」のことである。
この俗称。現在は、市販されている目薬のパッケージにも、普通に記されている。
だが、言葉狩りが横行している現代であってみれば、いずれは、不適切な語として、使用されなくなってしまうかもしれないと思った。
少なくとも、他の俗称である「め〇〇〇」は、今はもう、アウトであろう。
(目薬メーカーが行った、俗称の分布調査〔http://jp.rohto.com/learn-more/eyecare/monomorai/〕では、もう既に、ほとんど使用されていないようであるが。)
1979年に、いわゆる「ファーストガンダム」が放送された頃には「僕、〇〇〇じゃありませんから」(第19話)は、問題なく使われていた。
だが、「再放送時には、音声が切られていた」という投稿を、時々目にする。放送局によっても対応が異なるので、一概には言えないが。
共同通信社発行の『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』(2016年)では、この語は、仏教用語としてのみ使用可能である。一般的な用法は、引用以外は「物乞い」に言い換えること、とされている(p. 492)。
現在も、ミュージカルなどで享受されているトウェインの『王子と〇〇〇』は、問題の語をひらがな表記にして、お茶を濁しているものが多い。だが、タイトルを『王子と少年』に、変更しているものもある。
タイトルに「不適切な語」を含んだ過去の名作が、リメイクや映像化、新訳等に際し、タイトル変更されたケースは、少なくない。思いつくままに挙げると…
『△△△△△の暴君』→『王と鳥』
『ノートルダムの☆☆☆男』→『ノートルダムの鐘』
『☆☆☆の仔馬』→『イワンと仔馬』
(キチンとしたレポートではないので、製作年等のデータは割愛する)
そういえば、『みなしごハッチ』も、2010年の劇場版アニメでは『みつばちハッチ』になっていた。「みなしご」や「孤児」も、そろそろ、不適切判断のグレーゾーンに、入ってきているのかもしれない。
そんなことを言い出してしまえば『家なき子』はよいのか、ということにもなる。
私は数年前に、智歯周囲炎で智歯を抜いたのだが、要するに「親知らず」のことである。
この俗称すら、考えてみたら、問題ありということになってしまう。
私個人は、過剰な言葉狩りが横行しているような現在の風潮には、あまり賛成できない。
本来の趣旨から離れ、ただ言葉のみをあげつらっているように、感じるからだ。問題のある言葉さえ使用しなければ、それで事足れりとするのでは、問題の本質的な解決にはならない。
とはいえ、放送局などが、クレームを怖れ、不適切とされやすい言葉の使用を、過度に自粛してしまう気持ちも、わからなくはない。
私自身も、多少なりとも作品を公表している身として、不要な批判は避けたいと、痛切に感じているのであるから。
(「気持ちはわかる」と言っているだけであって、放送局のその姿勢を、支持しているわけではない。)
私だって、例えば、「えっ! あなたは小学生の頃から、****病院に通っていたの?」などと言われたら、傷つく。この語は、なるべくなら、世の中で使わないでほしい。
それはやはり、こうした文脈で使われるこの語には、精神疾患(者)・障害(者)・異常(者)に対する差別─誤解や無理解・偏見等々─が、込められていると感じるからだ。
だがだからといって、『釣りキチ三平』のタイトルに、いちゃもんをつける気はない。そういうことだ。
軽い日常雑記のつもりが、随分と、地雷だらけの記事になってしまった。だが、恐れずに公開する。
自分の些細な眼病をきっかけに、常々感じていることを、問題提起として、記してみたのである。
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