40年近くかけて神経症性障害を乗り越えたものの、母親の介護で大変な日々の思いを発信しています。アニメの研究による博士号取得は、しばらくお休み。

Prev  «  [ 2024/02 ]   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  » Next
最新の記事(全記事表示付き) *frame*
フリーエリア2
最近のコメント(コンパクト)
データ取得中...
カテゴリ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク
月別アーカイブ

「ナルニア」番外編─『この世でいちばんの贈りもの』あるいは、最上のカウンセリング

通信制大学院で修士号を取得した際、専門科目で、C・S・ルイスの「ナルニア国ものがたり」シリーズを講読した。その折のリポート課題に、以下のようなものがあった。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
『ライオンと魔女』において、アスランに助けられたエドマンドがピーター、スーザン、ルーシーと再会する前に、彼がアスランと交わした決して忘れることのない話とはなんであったのか。
それを想像して、物語を創作しなさい。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

次に掲げるのは、その際に書いた物語である。

作中に登場するアナグマは、アニメ版『ガンバの冒険』のガクシャ(CV. 富山敬)のイメージでキャラ設定し、セリフ回しなども、富山敬のしゃべりを念頭に置いて書いた。

アスランとエドマンドの会話は、カール・ロジャーズのカウンセリング理論にのっとったものを、目指したつもりである(一応、ロジャーズの直弟子である先生に、カウンセリングのイロハを学んでいるため)。

タイトルの「この世で…」は、『人生でいちばんの贈りもの─生きる力を伸ばすのレッスン』(アンドレ・オー、日本教文社、1993)を意識した。いつの間にか、表記違いの同名小説が出ているようであるが。

言ってしまえば、理療法に深く関わっていた頃の残り火である。
ここしばらくのの状態から、なつかしく思い出したので、掲げてみた。
自分が書いたものなのに、自分で読み返して感動してしまうとは……何という手前味噌かと思う。

理療法・精神療法に詳しくない方には、作中において、アスランが説教やアドバイスの類いを、ほとんどしていないことに注目していただきたい。

∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
この世でいちばんの贈りもの

エドマンドは、朝つゆのおりた草のうえを、とぼとぼと歩いていました。エドマンドの前を、偉大なるアスランが、ゆうゆうと歩いています。アスランによびだされてテントをでてから、もうどのくらい歩いたのでしょう。長い沈黙にたえられなくなって、とうとうエドマンドは、アスランに声をかけました。

「あのう、どこまでいくんですか?」

するとアスランは立ちどまり、エドマンドのほうに向きなおりました。

「このあたりでよいだろう。ここなら、だれにも話を聞かれることはない。」

「ぼくに罰をおあたえになるのなら、早くしてください。」

エドマンドは、アスランと目をあわせないように、下を向きながら、小さな声でそういいました。

「あなたは、罰をあたえてほしいのかね。」

アスランにそう問われて、エドマンドはおどろいて聞きかえしました。

「あなたは、罰をあたえるために、ぼくをよびだしたのではないのですか?」

「なぜ、そう思ったのかね?」

「だって、ぼくはとても悪い子なんです。みんなを裏切って、白い魔女のところに行っただけじゃありません。ぼくは、うそつきで、いじわるで、じぶんのことしか考えない、最低のやつなんです。」

そうしてエドマンドは、アスランの前にひざまずき、さいしょにナルニアに入っていらい、じぶんがしてきた悪いおこないのすべてを、つつみかくさずに話しました。もはや、じぶんをかざろうとは思わず、じぶんに都合のいいように、ものごとをゆがめることもしませんでした。

アスランは、なにもいわず、ただ、じっと聞いていました。エドマンドの話をさえぎったり、とがめだてたりすることは、一度もありませんでした。
エドマンドは、アスランが、じぶんの話を、ただ耳で聞くのではなく、からだじゅうで聞いてくれているように感じました。じぶんの思いを、さばいたり、否定したりすることなく、そのまま受けとめてもらえるように感じていました。

話をおえたとき、エドマンドのは、じぶんのおこないに対する、後悔の念でいっぱいになっていました。エドマンドの両の眼[まなこ]からは、苦い涙が、ぽろぽろとこぼれ落ちました。

「よく、話してくれた。」

エドマンドの耳に届いたアスランの声は、このうえもなくやさしく、おだやかでした。エドマンドが見上げると、信じられないことに、アスランの眼[まなこ]にも、涙があふれていました。
エドマンドは知りました。アスランは、このうえもない愛とゆるしをもって、エドマンドの話を聞いてくれていたのだと。エドマンドの思いを受けとめるだけでなく、エドマンドの痛みや苦しみを、ともに感じてくれていたのだと。

「あなたは、悪いおこないをしたじぶんが、いやでたまらないのだね。みずからのおこないを、のそこから後悔しているのだね。」

エドマンドは、アスランにしがみつき、たてがみに顔をうずめて泣きだしました。エドマンドの眼[まなこ]からは、まえよりももっと多くの涙が、こぼれ落ちました。けれどその涙は、ここちよいものでした。そしてエドマンドは、涙とともに、自分のなかのみにくいもの、よごれたものが、流れでていくような、すがすがしさをかんじていました。

*      *      *   

とつぜん、エドマンドのうしろで、すっとんきょうな声がしました。

「これはこれは! もしやあなたさまは、アスランではございませんか?」

エドマンドがふりかえると、そこには、アナグマが立っていました。動物園で見るアナグマよりはひとまわり大きく、ぶあついメガネをかけています。

「いかにもわたしはアスランだが。」

「やはりそうでしたか。文献にあるとおりの偉大なおすがた。冬眠からさめたばかりとはいえ、わがはいの目に、くるいはありませんでしたな。」

アナグマは、得意そうに、メガネをかけなおしました。

「申しおくれました。わがはいは、アナグマ族の学者で、まこと掘りと申します。あなたさまがおこしになり、長い冬がおわりをつげつつあるということは、白い魔女はほろぼされたと、解釈してよろしいのですかな?」

「いや、まだほろぼされてはいない。それは、アダムのむすこたちのはたらきしだいだ。」

「アダムのむすこたちですと? それでは、そこにいるおかたが、アダムのむすこ、すなわち人間なのですな。」

まこと掘りは、うれしそうに声をはりあげると、エドマンドの手をにぎりしめました。

「やはり、人間は実在していた! 神話や伝説のなかだけの存在ではなかった! わがはいの学説の正しさが、ようやく証明されたのだ。」

「このナルニアでは、人間は、伝説のなかの生きものだったんですか。」

「そうですとも。ご存じないのですかな? もっとも有名ないい伝えは、ふたりのアダムのむすこたちとふたりのイブのむすめたちが、ケア・パラベルの四つの王座につくとき、白い魔女の時代はおわり、魔女のいのちもうしなわれる……というものですかな。」

「そんないい伝えがあったんですか。」

ビーバーさんの家を、話のとちゅうでぬけだしてしまったエドマンドは、今はじめて、そのことを知りました。そして、なぜ白い魔女が、じぶんたちきょうだいを手に入れたがったのかということを、理解したのです。

「学者どの。すまないが、わたしはこのアダムのむすこと、たいせつな話のさいちゅうなのだ。」

「これは、失礼をいたしました。では、アダムのむすこどの。いずれ、ゆっくりとお話をうかがわせてください。」

まこと掘りは、そういうと、のそのそと去ってゆきました。

*      *      *    

「知りませんでした。そんないい伝えがあったなんて。でも、きっと人ちがいです。ぼくたちが……いいえ、ぼくがナルニアの王になるなんて。たまたま、男女ふたりずつのきょうだいだったというだけで、なにかのまちがいです。」

「するとあなたは、あなたがたが、じぶんの意思で、このナルニアにきたと思っているのかね。」

「えっ、ちがうんですか?」

「なんびとたりとも、この私に招かれることなくして、ナルニアに入ることはかなわないのだよ。」

それを聞いて、エドマンドの胸に、新たな感動がこみあげてきました。

「あなたは、こんなぼくを、ナルニアの王になるものとして、よんでくださったのですか。とてもうれしいです。でも、やはり、ぼくには無理だと思います。」

するとアスランは、エドマンドの肩にやさしく手をおいて、いいました。

「このナルニアは、長いあいだ、ふかい雪にとざされていた。だが、今はどうだ? あたりを見てごらん。なにが見えるかね。」

「雪がとけて、緑の草がしげりはじめています。ところどころに、ユキワリソウや、クロッカスや……サクラソウがさいていて、とてもきれいです。雪におおわれていたのが、うそみたいです。ぼくも、こんなふうに、変われるでしょうか。」

「それは、あなたの心がけしだいだ。あなたはくいあらためた。これからは、ただしく生きなさい。」

アスランはやさしく、けれどきっぱりといいました。それを聞いて、エドマンドは、これからはなにがあろうと、アスランのいうとおり、ただしく生きようと、心に決めました。

「あなたのきょうだいたちが、目をさましたようだ。こちらにやってくるよ。」

アスランの指さすほうに、きょうだいたちのすがたを見たエドマンドは、思わずあとずさりをしました。

「どうしよう。ぼくは、みんなにあわせる顔がありません。とくに、ルーに。」

「すぎたことを、いつまでも気にするのはやめなさい。あなたは、くいあらためたのだ。きょうだいたちにも、きちんとあやまれば、それでいい。」

「みんなは、ぼくをゆるしてくれるでしょうか?」

「それは、わたしには答えられないな。」

アスランのきびしいへんじを聞いて、エドマンドは、急に不安になりました。けれどアスランは、すぐにやさしく続けました。

「心配はいらないよ。わたしにまかせておきなさい。」

ああ、そうなんだと、エドマンドは思いました。どんなときでもアスランを信じ、アスランにしたがっていれば、なにも心配することはないのです。そしてエドマンドは、アスランに導かれるまま、きょうだいたちのほうへと、足をふみだしました。

この朝のアスランとの会話を、エドマンドは、一生、忘れませんでした。エドマンドは、ナルニアの王となってからも、おごりたかぶることなく、ただしく生きることを心がけ、ついには、「正義王」とよばれるまでになりました。

エドマンドは、みずからの裏切りのために、サンタクロースからの贈りものを、もらいそこねてしまいました。けれどそのかわり、エドマンドは、アスランのふかい愛とゆるしという、この世でいちばんの贈りものをもらったのです。
関連記事

テーマ : 自作小説(二次創作)
ジャンル : 小説・文学

Tag : 精神療法  アニメ   

C

omment


T

rackback

この記事のトラックバックURL

https://flowerhill873.blog.fc2.com/tb.php/138-75ac9b3b


プロフィール

ハナさん*

Author:ハナさん*
2019.5.26付けで、Yahoo!ブログから移行してきました。
上記日付より前の記事は、Yahoo!ブログで書かれたものです。

移行から2年経過したのを機に、ブログタイトルを変更いたしました。
あわせて、紹介文も更新。

*代用ゲストブックあり
「カテゴリ」からどうぞ

〔ブログ紹介文〕
誰もが、たやすく発信者となれるネット時代。

文章で社会改革ができると思い込んでいたのは、若さゆえの過ちにすぎない。
けれど。
それでもまだ私は、文章を公表することは、無意味ではないと信じたい。

私がここに記すのは、単なるつぶやきの類いではない。
社会に向かって訴えたいこと、公表する意味があると思えることのみだ。
若い頃のように気負い込んで、大声で叫ぶことはできないけれど。

病気ではなく、障害でもなくても。諸々と生きづらい、おひとりさま介護の日々においても、光を求めて!

〔自己紹介〕
高校1年で発症した神経症性障害(身体表現性障害[身体症状症]その他)を、40年近くかけて乗り越える。
校正者として、非正規雇用勤続30年。数年前から校閲の仕事も行う。

1990年代、森田療法の研究で学士号取得後、カール・ロジャーズの直弟子が講師であるカウンセラー養成講座で単位取得。
地元の民間心理相談機関でセラピストのインターンとなり、各種心理療法を学修するが、自分は援助職には向いていないことを痛感。

アニメーションの研究で修士号取得。
博士課程・単位取得満期退学。
現在、博士論文のテーマを再検討中。専門は、巨大ロボットものの予定。

アクセスカウンター
フリーエリア
最新記事
Tree-Comment
検索フォーム
RSSリンクの表示
QRコード
QR